湛増が源氏に同心との噂


『平家物語』巻第六「入道死去」より一部を現代語訳。

その後、四国の兵どもはみな河野四郎に従いつく。熊野別当湛増も、平家重恩の身ではあったが、それもそむいてに源氏の味方するとの噂が聞こえてきた。およそ東国・北国ことごとくそむいた。南海・西海はこのようである。野蛮な民族の蜂起が耳を驚かし、動乱の兆しになるような事件がしきりに報告される。野蛮な民族はたちまち蜂起する。この世はただ今滅びてしまうのではと、必ずしも平家一門でなくとも、心ある人々で、嘆き悲しまない人はいなかった。